ウラジーミルの微笑

池澤夏樹=個人編集 世界文学全集の全巻読破を目指します

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1-07『ハワーズ・エンド』E・M・フォースター/吉田健一訳

冷静と情熱と香気と悪文のあいだ 「・・・あの人の頭は本の滓、文化でいっぱいで、わたしたちはあの人がそんなものは頭から洗いだして本物が好きになるといいと思っているんです。どうすれば生きて行くことに負けずにいられるか教えたくて、さっき言いました…

『大いなる遺産』チャールズ・ディケンズ/石塚裕子訳

月刊少年ピップ まったくいやな天気で、暴風雨だったし、通りはどこもかしこも一面泥、泥、泥だった。来る日も来る日も、茫洋として深く垂れこめる雨雲が東方からロンドン上空へ押し寄せてきたが、東方の雲と風とは無尽蔵だぞといわんばかりに、あいかわらず…

『イギリス文学史入門』川崎寿彦著

歴史のお勉強 古典時代から文学とは、有用性(use)を娯楽性(delight)でくるむものとみなす考え方が支配的であったが、市民社会はこの考え方を強めこそすれ、弱めることはなかった。(p.85) 小説は市民階級のためのジャンルである。・・・そして十八世紀を…

1-06①『暗夜』残雪/近藤直子訳

純粋理性批判 あのときはついておらず、風も通さぬ麻布の蚊帳のなかで汗をかきっぱなし、ひと晩じゅう真っ暗な坑道の悪夢のなかで掘っていた。そのときぼくのコオロギの王を失ってしまったのだ。そいつはぼくのポケットから跳び出して坑道の溝に跳びこんだき…

『モンテ・クリスト伯』アレクサンドル・デュマ/山内義雄訳

モンテ・クリスト・ナンバー1 「学ぶことと知ることとはべつだ。世の中には、物識りと学者とのふた色があってな。物識りをつくるものは記憶であり、学者をつくるものは哲学なのだ。」 「ではその哲学が習えましょうか?」 「哲学は習えぬ。哲学とは、学問の…