ウラジーミルの微笑

池澤夏樹=個人編集 世界文学全集の全巻読破を目指します

☆☆☆☆

2-01①『灯台へ』ヴァージニア・ウルフ/鴻巣友季子訳

時間よ止まれ 諸行は無常であり、すべては変わりゆくが、しかしことばは残り、絵も残るのだ。(p.230) <<感想>> ヴァージニア・ウルフというと、付きまとって離れないいくつかのイメージがある。 曰く、「モダニズムの旗手」だとか、「意識の流れ」を用いた代…

『ミドルマーチ』ジョージ・エリオット/工藤好美・淀川郁子訳

文学的な、あまりに文学的な リドゲイトは初めて、些細な社会的条件が糸のようにからみついて、その複雑なからくりが彼の意図を挫折させようとするのを感じた。(第二部18章、1巻p.366) <<感想>> 3週間も更新が空いてしまったのは、この長い作品を読んでい…

1-11『鉄の時代』J・M・クッツェー/くぼたのぞみ訳

死せるトルストイ、生けるクッツェーを わたしに共感して読んではだめよ。あなたの心臓とわたしの心臓といっしょに拍動させないで。(p.125) <<感想>> 久々にキツい読書だった。 本作『鉄の時代』の主人公である老女カレンの置かれた状況はキツい。 舞台はア…

『マーシェンカ』ウラジーミル・ナボコフ/奈倉有里訳

けりをつける アルフョーロフは座ったままもぞもぞと体を動かし、二回ほどため息をつくと、小さく甘い音色で口笛を吹き始めた。やめたかと思うと、また吹く。そうして十分ほどが経ったとき、ふいに頭上でカシャリと音がした。(p.14) <<感想>> ナボコフはやっ…

1-10①『アデン、アラビア』ポール・ニザン/小野正嗣訳

孤独な旅行者の夢想 万事上々。祈りとアブサンがゲームに加わって、文明国の市場では植民地株が上昇する。(p.30) <<感想>> なかなかどうして快作である。 本書をごくごく簡単に要約するとこうなる。 20世紀初頭、一人のフランス人の若者がアラビア半島のアデ…

1-08①『アフリカの日々』イサク・ディネセン/横山貞子訳

いかさま師ディネセン イギリスのおだやかな風景のなかの小川と、アフリカの山地の尾根とのあいだに、デニスのたどった生涯の道がある。その道が曲折し、常軌を逸していると見えるのは目の錯覚である。彼をとりまく環境のほうが常軌を逸しているにすぎない。…

『子供部屋のアリス』ルイス・キャロル/ジョン・テニエル絵/高橋康也訳/高橋迪訳

最初のハンバート、最初のアリス さて、いったいどうやったらからだをかわかすことができるか、だれも知りませんでした。でもドードー*1がーとてもかしこいトリなんですーいちばんいい方法は、ヤタラメきょうそうをやることだといいました。 <<感想>> 当ブロ…

『マンスフィールド・パーク』ジェイン・オースティン/中野康司訳

機動戦士オースティン 臆病なファニーから見ると、ミス・クロフォードの乗り方はびっくりするほど上手だった。それから数分後に、ふたりの馬は停止し、エドマンドはミス・クロフォードのそばへ行って何か話しかけ、手綱の使い方を教えるために彼女の手を取っ…

『小説の技法』ミラン・クンデラ/西永良成訳

セカイ-内-存在 小説は固有の仕方、固有の論理によって、人生の様々な諸相を一つひとつ発見してきた。すなわち、セルバンテスの同時代人たちとともに冒険とは何かを問い、サミュエル・リチャードソンとともに「内面に生起するもの」を検討し、秘められた感情…

1-02『楽園への道』マリオ・バルガス=リョサ/田村さと子訳

西欧の接ぎ木 「フローベールの小説『サラムボー』を読んだことがあるかね、牧師」とコケは訊ねた。 (中略)コケは彼に、あの本はとても素晴らしい本だったと言った。フローベールは燃え立つような色彩で、ひとつの野蛮な民族の偉大な活力や生命力、創造力…