ウラジーミルの微笑

池澤夏樹=個人編集 世界文学全集の全巻読破を目指します

イギリス文学

2-01②『サルガッソーの広い海』ジーン・リース/小沢瑞穂訳

名前をつけてやる 「あれは白いゴキブリの歌。私のことよ。彼らがアフリカで身内から奴隷商人に売られてやってくる前からここにいた白人のことを、彼らはそう呼ぶの。イギリスの女たちも私たちのことを白い黒んぼって呼ぶんですってね。だから、あなたといる…

『ジェイン・エア』シャーロット・ブロンテ/河島弘美訳

残酷なブロンテのテーゼ 「ジョージアナ、あなたみたいに虚栄心が強くて愚かな生き物が、この地上に存在するなんて許されないわね。生まれてくるべきじゃなかったのよ。人生を無駄にしているんですもの。」(下巻、p.39) <<感想>> 『ジェイン・エア』は、多く…

2-01①『灯台へ』ヴァージニア・ウルフ/鴻巣友季子訳

時間よ止まれ 諸行は無常であり、すべては変わりゆくが、しかしことばは残り、絵も残るのだ。(p.230) <<感想>> ヴァージニア・ウルフというと、付きまとって離れないいくつかのイメージがある。 曰く、「モダニズムの旗手」だとか、「意識の流れ」を用いた代…

『ミドルマーチ』ジョージ・エリオット/工藤好美・淀川郁子訳

文学的な、あまりに文学的な リドゲイトは初めて、些細な社会的条件が糸のようにからみついて、その複雑なからくりが彼の意図を挫折させようとするのを感じた。(第二部18章、1巻p.366) <<感想>> 3週間も更新が空いてしまったのは、この長い作品を読んでい…

『子供部屋のアリス』ルイス・キャロル/ジョン・テニエル絵/高橋康也訳/高橋迪訳

最初のハンバート、最初のアリス さて、いったいどうやったらからだをかわかすことができるか、だれも知りませんでした。でもドードー*1がーとてもかしこいトリなんですーいちばんいい方法は、ヤタラメきょうそうをやることだといいました。 <<感想>> 当ブロ…

1-07『ハワーズ・エンド』E・M・フォースター/吉田健一訳

冷静と情熱と香気と悪文のあいだ 「・・・あの人の頭は本の滓、文化でいっぱいで、わたしたちはあの人がそんなものは頭から洗いだして本物が好きになるといいと思っているんです。どうすれば生きて行くことに負けずにいられるか教えたくて、さっき言いました…

『マンスフィールド・パーク』ジェイン・オースティン/中野康司訳

機動戦士オースティン 臆病なファニーから見ると、ミス・クロフォードの乗り方はびっくりするほど上手だった。それから数分後に、ふたりの馬は停止し、エドマンドはミス・クロフォードのそばへ行って何か話しかけ、手綱の使い方を教えるために彼女の手を取っ…

『大いなる遺産』チャールズ・ディケンズ/石塚裕子訳

月刊少年ピップ まったくいやな天気で、暴風雨だったし、通りはどこもかしこも一面泥、泥、泥だった。来る日も来る日も、茫洋として深く垂れこめる雨雲が東方からロンドン上空へ押し寄せてきたが、東方の雲と風とは無尽蔵だぞといわんばかりに、あいかわらず…

『ロビンソン・クルーソー』ダニエル・デフォー/平井正穂訳

物語の命脈 それからもう一つ面白いことは、三人しか臣民がいないのに、三人とも宗派がちがっていることであった。従者のフライデイはプロテスタント、その父は異教徒で食人種、スペイン人はカトリックだった。しかし、ついでながら、私は自分の全領土を通じ…

『イギリス文学史入門』川崎寿彦著

歴史のお勉強 古典時代から文学とは、有用性(use)を娯楽性(delight)でくるむものとみなす考え方が支配的であったが、市民社会はこの考え方を強めこそすれ、弱めることはなかった。(p.85) 小説は市民階級のためのジャンルである。・・・そして十八世紀を…