ウラジーミルの微笑

池澤夏樹=個人編集 世界文学全集の全巻読破を目指します

注釈について

世の中は桃とりんごでできている

注釈が好きだ!

割注*1も、脚注*2も、後注*3もみんな大好きだ!

「14へ行け」*4などと言われるがまま、あっちへこっちへ行ったりきたり。そんなゲームブックみたいな読書も大好きだ。

本文などは注釈の前に平伏すがいい。そう、ナボコフ先生による『エヴゲーニイ・オネーギン』のように、本文を凌駕してしまえばいいのだ。

断言しよう。世界は注釈できている。

イスラム世界は、宗教と法とが一体となっている。宗教とはクルアーンであり、クルアーンハディースにより注解され、その外側にはイジュマーが、さらにその外側にはキヤースがあると言われる*5

日本法もそうだ。一か条の条文に、夥しい判例や学説が積み重ねられ、社会は少しずつ時を刻んでいく。その集積である書物コンメンタール」の言葉は、ドイツ語の「注釈」に由来する。

そう、注釈とは、人間の知性と文学史の進歩と深化の歴史そのものである。

注釈の量こそが、翻訳者の勤勉さと、出版社の誠実さと、書物の価値とを決定づけるのである! 

債権各論―平成16年民法現代語化 (1) (別冊法学セミナー―基本法コンメンタール (No.186))