ウラジーミルの微笑

海外文学・世界文学の感想を長文で書くブログです。池澤夏樹世界文学全集の全巻マラソンもやっています。

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『紙の動物園 ケン・リュウ短篇傑作集 1』ケン・リュウ/古沢嘉通訳

見てごらんよく似ているだろう

・・・ファーツォンが近くにいるとき、きみの呼気に含まれているオキシトシンとパソブレッシンのレベルが急上昇しているのを検知しているし、心拍数の上昇と虹彩の拡大も見られる。これらは明白な身体的徴候だよ。(p.147)

普段、作家のバイオクラフィーに触れることはあまりないけれど、今回はちょっとその話題を先出ししておいた方が良いだろう。

ケンリュウ、中国生まれ、アメリカ育ち。ハーバードの英文科を卒業し、マイクロソフトに就職した後プログラマーをやったかと思えば、ロースクールに行って弁護士になった。まるで全部載せのラーメンような経歴だ。

これが日本なら、同じキャリアを目指すように指導する学歴(職歴)業の人やTVスターになっちゃうのに、ケン・リュウは作家になってくれた。

 

こうした経歴を反映してか、彼の作品には、日本を含むアジアとアメリカの関係やプログラミング、弁護士などのテーマが頻出である。そして、いちおうはSF作家にカテゴライズをされているようであり、これらのテーマにSFのエッセンスを振りかけたのが彼の作品の特徴となっている。

本作は短篇集であるため、あとは各短篇の感想に回すとしよう。いつもどおり、気に入ったものには+印を付けた。なお、いつもはネタバレ上等が当ブログのスタイルであるが、SF×短篇という以上、着想勝負の作品もあるため、ネタバレは控えめにした。

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『百年の孤独』の次はこれだ!文庫で読めるラテンアメリカ文学

はじめに

文庫で読める!!!

百年の孤独』は日本でももうかれこれ50年ほど売られ続けている。このため、正直「文庫化」がこれほどのインパクトを与えるとは思ってもいなかった。本を買い集めるためには金に糸目をつけない自分がいかに異端で、一般の読書人がいかに「価格」に敏感かを改めて思い知らされた。

このため、この記事ではあくまで手に入り易く価格も安い「文庫」にこだわって紹介をしている。

なお、忙しい現代人のために冒頭のここで結論も書いておこう。

百年の孤独』を読んだら、日本文学なり、ヨーロッパ近代文学なり、ふだんの自分の領域に戻る前に、絶対に絶対に絶対に、バルガス・リョサの長編から1作品、それとコルタサルの短篇集『悪魔の涎・追い求める男』を読んで欲しい!

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「四季四部作」アリ・スミス/木原善彦訳

この記事はアリ・スミスの「四季四部作」全作の感想を書いた記事になる――予定である。いまのところ、完成次第順次書き足していく方針だが、途中で修正するかもしれない。あるいは、進行中の読書の感想が残っているのもまた一興として修正せずに書き連ねるかもしれない。

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『遠読〈世界文学システム〉への挑戦』フランコ・モレッティ/秋草俊一郎他訳

燃え上がれ 愛のレジスタンス

今日取り上げるのはモレッティの『遠読』である。この本は、文学作品ではなく、批評分野の人文書である。このため、いつものスタイルではなく、要約を主体とした形式でまとめている。『遠読』を「遠読」したい人のためのメモといってもよいかもしれない。この文章の最後に、私が見たところの若干の感想も付している。

この本には、10本の論文が収録されているが、この種の本の読解の定跡に従い、本論に入る前にあとがきを読んだ。このため、この記事でも冒頭にあとがきの要約をつけている。

いずれの論文も、本書の形式に収録される際、原著者の手による前書きと後注とが付加されている。初出後に付加されたこれらの手段を用いて、著者による自己批判かあるいは自己弁護がされている箇所も多い。

概ねどれも独立して読むことができる。私のオススメは、2番目、3番目、そして9番目の論文だ。もう一つ入れるなら7番目だろうか。

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