ウラジーミルの微笑

海外文学・世界文学の感想を長文で書くブログです。池澤夏樹世界文学全集の全巻マラソンもやっています。

2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『ロリータ』ウラジーミル・ナボコフ/若島正訳

ふたり出会った日が少しずつ思い出になっても Lolita, light of my life, fire of my loins. My sin, my soul. Lo-lee-ta: the tip of the tongue taking a trip of three steps down the palate to tap, at three, on the teeth. Lo. Lee. Ta. ロリータ、我…

『やっぱり世界は文学でできている』沼野充義編著

新しい世界のドアを開く勇気 どんなに親しい友人でも、恋人でも、あなたの代わりに本を読んではくれない。(p.354) <<感想>> 読むと外国語の勉強がしたくなる素晴らしい本。 前作『世界は文学でできている』【過去記事】の続編である。本書の概要は前作の記事…

『世界は文学でできている』沼野充義編著

愛のままにわがままに 読書というのはそんなふうに自由な運動であるべきものです。ある一つの作品を読んで、そこに凝り固まっておしまいにするのではなく、そこからまた別の世界が広がってくる、つまりいままで面白く思えなかったものががぜん面白く読めるよ…

2-06①『庭、灰』ダニロ・キシュ/山崎佳代子訳

恋愛観や感情論で愛は語れない あの父の天才的な姿がこの話から、この小説から消えてしまってから・・・、歯止めがきかなくなってしまった。・・・今やたががはずれ、話の葡萄酒、果物の魂は流れ出し、それを皮袋にもどし、話にまとめ、クリスタルのグラスに…

『ソーネチカ』リュドミラ・ウリツカヤ/沼野恭子訳

かじかむ指の求めるものが 今回ロベルト・ヴィクトロヴィチが描いたのは何から何まで白い静物画数枚で、そこには「白」の本質について、フォルムについて、絵画の基礎を左右する質感について、それまで彼が苦労して考えてきたことがいろいろ映しだされていた…

『ヌマヌマ はまったら抜けだせない現代ロシア小説傑作選』ミハイル・シーシキン他/沼野充義・沼野恭子編訳

キラキラと輝く大地で <<感想>> ヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマ!ヌマ!ヌマヌマ! 狂ったのではなくて、これは歓喜の雄叫びだ。そして多少なりとも狂っている…