ウラジーミルの微笑

海外文学・世界文学の感想を長文で書くブログです。池澤夏樹世界文学全集の全巻マラソンもやっています。

アメリカ文学

001『ジーザス・サン』デニス・ジョンソン/柴田元幸訳

銀の龍の背に乗って 「お前らにはわからんのだよ。チアリーダーだろうがチームのレギュラーだろうが、なんの保証もありやしないんだ。いつ何がおかしくなっちまうか、わかったもんじゃないのさ」と、自分も高校でクォーターバックか何かだったリチャードが言…

『ネイティヴ・サン』リチャード・ライト/上岡伸雄訳

線をひかれた ここからキミ入れないと 映画館では、努力せずに夢を見られる。やらなければならないのは、座席の背もたれに寄りかかり、目を開けていることだけ。(p.27) <<感想>> 怖い怖い怖い怖い。本作の第一部のタイトルはそのまま「恐怖」。 何が怖いって…

『黄金虫変奏曲』リチャード・パワーズ/森慎一郎・若島正訳

思いのすべてを歌にして 他の何は調べられても、価値を調べ出すことはできない。(p.33) 科学の目的は制御じゃない。・・・支配じゃない、畏敬なんだ。(p.547) 私たちは情報から知を抽出したけれど、それでは足りない。・・・私たちに必要なのはあれだ、・・…

2-11『ヴァインランド』トマス・ピンチョン/佐藤良明訳

君はドレスに裸足のままで 六〇年代の政治闘争、ドラッグ、セックス、ロックンロール、みんなぶちこんだ映画つくンノ、これがワシらの野望でな。(p.70) <<感想>> きっとたぶん全部『重力の虹』が悪い。 重厚長大難解。全部嘘だ。むしろ軽妙にしてスピーディ…

2-05『クーデタ』ジョン・アップダイク/池澤夏樹訳

Imagine there's no countries おまえはエクソンによって抹消され、ガルフに巻き込まれ、アメリカによって押しつぶされ、フランスによって公民権を剥奪される。(p.264) “You will be Xed out by Exxon,engulfed by Gulf,crushed by the U.S.,disenfranchised…

2-04『アメリカの鳥』メアリー・マッカーシー/中野恵津子訳

あのひとのママに会うために 「田舎の店って、ただの配給センターなの?」と母はわめいた。「それなら社会主義のほうがましね。ポーランドやハンガリーみたいに国営店のほうが」ピーターは眉をひそめた。鉄のカーテンの向こう側で演奏して以来、母は共産主義…

1-09『アブサロム、アブサロム!』ウィリアム・フォークナー/篠田一士訳

ディケンズ時々バルザック、そして それが思い出というものの実体なのです―知覚、視覚、嗅覚、わたしたちが見たり聞いたり触れたりするときの筋肉―心でもない、思考でもないもの。どだい記憶などというものはありません。それらの筋肉が探りあてるものを脳髄…

1-01『オン・ザ・ロード』ジャック・ケルアック/青山南訳

カウンター・カルチャーの「王道」 とつぜん、気がつくとタイムズ・スクエアだった。アメリカ大陸をぐるりと八〇〇〇マイル(12785km)まわって、タイムズ・スクエアに戻ってきていた。ちょうどラッシュアワー時で、ぼくの無邪気な路上の目に、ドル札めざして…