白水社エクス・リブリス
Take Me Home, Country Roads 外では、 時として銃声。 時として祈り。 時として静寂。(p.119-120) <<感想>> 入院の経験はおありだろうか? ベットから動くことができず、さりとてすることもなく、リノリウムの廊下に響く看護師の足音だけが妙に際立って聴こ…
見えない自由がほしくて ただ一つの願いは、柩のそばに付き添って通夜をするときに、・・・みんなに来てもらって、たっぷり物語を話してほしいのさ。知っている話でもかまわないからね。そのあとは、火葬して、すっきり焼いておくれ。死とはこんなもの、重要…
世界が終わるまでは 離れる事もない スティーヴンは頷いた。著書にも書いたことですが、大事なのは教育ではなく、モチベーションです。メンタリティーの問題なのです。それが、経済で世界をリードするアメリカ合衆国にとってどのような意味を持つのか?私た…
まだまだ世界は暴力にあふれ 平和ではありません 彼はわかりやすい言葉で、最も優れた物語とは、最も恐ろしい物語でも、最も悲しい物語でもないのだと説明した。重要なのは真に迫っているかどうか、そして語り口なのだ。必ずしも戦争や殺人の話でなくてもい…
誰のものでもない 髪をなびかせ道の先には蜃気楼 イランを縦断してまだ一か月しか経っていないのに、僕は以前の自分ではなかった。旅の意義は、よその土地の景色に驚嘆するというよりも、新たな視点を持ち帰ることだろう。そして旅は時の流れを濃密にする。…
街が また暮れてく 全ての在り方を受け入れて 一万元の紙幣を目にするのは初めてだった。・・・その紙幣に目をやると、テーブルの上に広げられた五枚の薄い紙が、破れた扇子のようだった。その紙幣が体内にもたらす力が感じられた。薄い青色は、千元札の茶色…
生きてく強さを重ね合わせ 神は、この自然だ。(p.51) <<感想>> 物語には適齢期があるという話がある。 確かに、ドストエフスキーなら多感な10代に読むのが相応しいだろうし、アンナを「お姉さん」と捉えているようでは、トルストイの理解は叶わないだろう…
誰かを愛して生きること 女がいる。僕は彼女を愛している。理由は逐一説明できろうだろう。彼女の特性を、・・・ひとつずつ挙げてみよう。・・・イタロ・カルヴィーノとオートミールが大好き。ブロンズの肌。下品に、同時に恥じらいをもって、抜群に大胆に動…
南風が消したTiny Rainbow 彼の物語は、『大いなる遺産』が子どもたちに与えたと同じ感動を与えなければならない。村全体が心を奪われて、この忘れられた島の小さな焚き火の周りに座っている。言葉にできないような出来事が起こっても、外の世界はこれっぽち…
七回目のベルで受話器を 彼女の声はいつものように冷たかった。・・・話し下手な人によくある、無関心な口調で自分の人生を語るあの声、余計なところに感嘆符を置き、傷をほじくり返してでも話すべきところで黙り込んでしまうあの声だった。(p.184) <<感想>>…
電話やメールじゃなんだから ああら!あなたはもうわたしのことなんか忘れちゃったんだと思ってた。 いくらイエメンでも、インターネットカフェへ立ち寄ってちょっとメールするくらいのことができないだなんて、言わないでよね。最近どこかへ行っていて、だ…
銀の龍の背に乗って 「お前らにはわからんのだよ。チアリーダーだろうがチームのレギュラーだろうが、なんの保証もありやしないんだ。いつ何がおかしくなっちまうか、わかったもんじゃないのさ」と、自分も高校でクォーターバックか何かだったリチャードが言…
ああ 心に愛がなければ テキストは互いに異花受粉するため、何世紀もの時代を飛び越えているのだ。(p.65) <<感想>> イラン出身の作者の小説を取り上げるのは、『スモモの木の啓示』【過去記事】に続き2回目となる。 作者のアザリーン・ヴァンデアフリートオ…
今 心の地図の上で 起こる全ての出来事を照らすよ 「・・・小僧、いいか。世界にはずっと誰にも知られないままのことだってあるんだ。人の目が見たものが絶対とは限らない。」(p.19) <<感想>> 珍しく引用、それも長いものからはじめてみたい。 一か月後の同…
手錠かけられるのは只あたしだけ そもそも、そういう話が語られることがあるとすれば、僕が唯一の語り手のはずだった――物語を語ることにおいては、僕は一族でただひとりのプロなのだから。(p.162) <<感想>> 本作は一応、連作短篇ということになっているが、…
だからまだ ここで光が差すまで 家具を焼き、何千という本を焼き、絵画は全部焼いた。絶望があまりに深くなったある日、とうとうこのムクバル族を壁から下ろした。絵を掛けていた釘を引き抜こうとした。・・・そのときふと思った。この小さな釘が壁を支えて…
ほんの一夜の物語を行こう! 「すでに記されていて、書き換えることのできないものに乾杯!」(p.18) <<感想>> イラン文学、である。 しかし、この物語をイラン文学と規定するのは、同じくイランに出自を持つ『千一夜物語』をイラン文学と規定するのと同じだ…
いつのことだか思い出してごらん ドイツ人は毒ガスを発明し、イギリス人は戦車を発明し、科学者は同位体元素や一般相対性理論を発見した。この理論によると、形而上学的なものは一切なく、すべては相対的であるという。(p.5) <<感想>> 「二〇世紀史概説」で…
当ブログではまもなく、池澤夏樹=個人編集 世界文学全集を全巻読了する見込みです。 そして次なる目標(?)として、白水社様より好評刊行中の海外文学シリーズである、「エクス・リブリス」の全巻読破を計画中です。そこで今回は、その下準備として「エク…