ウラジーミルの微笑

海外文学・世界文学の感想を長文で書くブログです。池澤夏樹世界文学全集の全巻マラソンもやっています。

19世紀文学

『サイラス・マーナー』ジョージ・エリオット/小尾芙佐訳

たとえ世界が生き場所を見失っても ・・・そもそも自分の性には合わない優雅な職につきたいと日ごろから願っている人間に、自分の身の丈に合っていた職を捨てさせてみるがいい。その人間は必ずや、お恵み深い僥倖を崇めたてまつる宗教に凝るようになるだろう…

3-03『ロード・ジム』ジョゼフ・コンラッド/柴田元幸訳

HEART燃えているなら 後悔しない 「・・・嘘ではない、けれど真実でもない。何というか・・・。真っ赤な嘘だったらすぐわかりますよね。この事件、正しいことと間違ったことの間には、紙一枚の幅もなかったんです」(p.143) <<感想>> 私以外にもそういう人は…

『ボヴァリー夫人』ギュスターヴ・フローベール/芳川泰久訳

ようやく、愛妻、某ジャクソン夫人 一度、昼のさなかに、野原の真ん中で、日射しがもっともきつく古びた銀メッキの角灯に当たっていたときに、小さな黄色い布の窓掛けの下から、一つの手がにゅっと出て、破いた紙切れを投げ捨て、それが風に乗ってずっと遠く…

『ルーヂン』イワン・ツルゲーネフ/中村融訳

SAY YES この間、ある紳士と一緒に渡船でオカ河を渡ったことがありましたが、渡船がけわしい崖についたので、馬車を手で引き上げなければならなくなりました。紳士のは恐ろしい重い幌馬車なのです。渡し人夫たちがその幌馬車を岸へ引き上げようとしてふうふ…

『ジェイン・エア』シャーロット・ブロンテ/河島弘美訳

残酷なブロンテのテーゼ 「ジョージアナ、あなたみたいに虚栄心が強くて愚かな生き物が、この地上に存在するなんて許されないわね。生まれてくるべきじゃなかったのよ。人生を無駄にしているんですもの。」(下巻、p.39) <<感想>> 『ジェイン・エア』は、多く…

『ミドルマーチ』ジョージ・エリオット/工藤好美・淀川郁子訳

文学的な、あまりに文学的な リドゲイトは初めて、些細な社会的条件が糸のようにからみついて、その複雑なからくりが彼の意図を挫折させようとするのを感じた。(第二部18章、1巻p.366) <<感想>> 3週間も更新が空いてしまったのは、この長い作品を読んでい…

『アンナ・カレーニナ』レフ・トルストイ/木村浩訳

一物四価 アンナはショールを取り、帽子を脱ごうとしたが、そのひょうしに、カールしている黒髪の一束に帽子をひっかけ、頭を振って、髪を放した。(上巻、p.141)*1 <<感想>> この記事を書いている現在、当ブログでは20世紀の作品ばかりを紹介している。 …

『白夜』フョードル・ドストエフスキー/小沼文彦訳

私の頭の中の空想家 「ああ!ほんとにあなたはすばらしいお友達ですわ!」としばらくしてから、ひどくまじめな調子で彼女は言いだした。「あたしのために神様がお送りくだすったんだわ!ねえ、もしもあなたがいらっしゃらなかったら、いったいあたしはどうな…

『子供部屋のアリス』ルイス・キャロル/ジョン・テニエル絵/高橋康也訳/高橋迪訳

最初のハンバート、最初のアリス さて、いったいどうやったらからだをかわかすことができるか、だれも知りませんでした。でもドードー*1がーとてもかしこいトリなんですーいちばんいい方法は、ヤタラメきょうそうをやることだといいました。 <<感想>> 当ブロ…

『マンスフィールド・パーク』ジェイン・オースティン/中野康司訳

機動戦士オースティン 臆病なファニーから見ると、ミス・クロフォードの乗り方はびっくりするほど上手だった。それから数分後に、ふたりの馬は停止し、エドマンドはミス・クロフォードのそばへ行って何か話しかけ、手綱の使い方を教えるために彼女の手を取っ…

『大いなる遺産』チャールズ・ディケンズ/石塚裕子訳

月刊少年ピップ まったくいやな天気で、暴風雨だったし、通りはどこもかしこも一面泥、泥、泥だった。来る日も来る日も、茫洋として深く垂れこめる雨雲が東方からロンドン上空へ押し寄せてきたが、東方の雲と風とは無尽蔵だぞといわんばかりに、あいかわらず…

『モンテ・クリスト伯』アレクサンドル・デュマ/山内義雄訳

モンテ・クリスト・ナンバー1 「学ぶことと知ることとはべつだ。世の中には、物識りと学者とのふた色があってな。物識りをつくるものは記憶であり、学者をつくるものは哲学なのだ。」 「ではその哲学が習えましょうか?」 「哲学は習えぬ。哲学とは、学問の…