ウラジーミルの微笑

海外文学・世界文学の感想を長文で書くブログです。池澤夏樹世界文学全集の全巻マラソンもやっています。

2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

水平読みと垂直読みについて

この世はでっかい宝島 ワインのテイスティング用語で、水平試飲と垂直試飲という言葉がある。 水平試飲というのは、ヴィンテージを固定した上で、同じ畑の違う生産者のワインとか、同じ生産者の畑違いのワインとかを飲み比べることをいう。垂直試飲というの…

3-05『短篇コレクションI』フリオ・コルタサル他/木村榮一他訳

二人ここから 遠くへと逃げ去ってしまおうか 冒頭に引用が来ないとしっくりこないね!でも、アンソロジーなので、引用は各作品の項目ですることにしました。また今回は概要/背景/本のつくり欄も省略で、書きたい部分だけ各作品の項目で触れています。 本巻は…

035『エウロペアナ 二〇世紀史概説』パトリク・オウジェドニーク/阿部賢一・篠原琢訳

いつのことだか思い出してごらん ドイツ人は毒ガスを発明し、イギリス人は戦車を発明し、科学者は同位体元素や一般相対性理論を発見した。この理論によると、形而上学的なものは一切なく、すべては相対的であるという。(p.5) <<感想>> 「二〇世紀史概説」で…

3-04『苦海浄土』石牟礼道子

生きてゆくことの意味 問いかけるそのたびに 海の上はほんによかった。じいちゃんが艫櫓ば漕いで、うちが脇櫓ば漕いで。 いまごろはいつもイカ籠やタコ壺やら揚げに行きよった。ボラもなあ、あやつたちもあの魚どもも、タコどもももぞか(可愛い)とばい。四…

『バベットの晩餐会』イサク・ディーネセン/桝田啓介訳

好きなの?って訊けたらいいのにね すぐれた芸術家というものは、お嬢さま、みなさんにはどうしてもお分かりいただけないものを持っているのです(p.91) <<感想>> だいぶ前に『アフリカの日々』を読んでお気に入りだったディーネセン。 このブログにも何度か…

『トリストラム・シャンディ』ロレンス・スターン/朱牟田夏雄訳

行儀よくまじめなんて出来やしなかった かりに私が・・・私の統治する王国をえらぶことをゆるされたとしたら、・・・私は心から笑う国民たちの国をえらびましょう。・・・私がもう一つ私の祈願に加えたいのは――神がわが統治する国民たちに、陽気であると同時…