ウラジーミルの微笑

海外文学・世界文学の感想を長文で書くブログです。池澤夏樹世界文学全集の全巻マラソンもやっています。

2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『8歳から80歳までの世界文学入門』沼野充義編著

少女の頃に戻った夢 ・・・すべてが絶望に覆われそうになっても、それでも消すことのできない希望の光もあることはわかっています。・・・文学には希望がある。私が言いたいのはそれだけです。(p.10) <<感想>> 読むと日本文学が読みたくなる素晴らしい本。 …

『チェヴェングール』アンドレイ・プラトーノフ/工藤順、石井優貴訳

好きな人や物が多すぎて 退屈な本は、退屈な読者から生まれる。(p.186) <<感想>> ---どちゃくそ面白いじゃねぇかよぉ、クソったれがよぉ!--- この怪作・奇作を他の作品で例えるのは難しい。強いていえば、神の代わりに共産主義を据えたドストエフスキー作品…

2-07『精霊たちの家』イサベル・アジェンデ/木村榮一訳

今心が何も信じられないまま 外の野原は、ようやく長い眠りから目覚めようとしていたし、夜明けの光がまるでサーベルのように山々の頂きを切り裂いていた。日差しを浴びてぬくもった大地からは、夜露が白い水蒸気となって立ちのぼり、まわりの事物の輪郭をぼ…

『それでも世界は文学でできている』沼野充義編著

いつまでも君に捧ぐ だからいい要約かどうかは別にしても、要約することにはその作品のエッセンスを自分なりに掴むという効用がある。(p.157) <<感想>> 読むと詩を読みたくなる素晴らしい本。 前作【過去記事】、前々作【過去記事】に続く第三弾。本書の概要…

『魅惑者』ウラジーミル・ナボコフ/後藤篤訳

空と君とのあいだに 夢によくあるように、この細部には何かしらの意味が煌めいている。(p.516) <<感想>> 本作は、未来永劫公平な評価をされることはないだろう。細かい経緯は後で背景欄に示すが、本作は『ロリータ』【過去記事】の習作的な作品として位置づ…

2-06②『見えない都市』イタロ・カルヴィーノ/米川良夫訳

ここではないどこかへ 物語を支配するものは声ではございません、耳でございます(p.309) <<感想>> いやー、まいった。この作品はまぁよくわからない。 「幻想的」な作品なら、残雪の『暗夜』【過去記事】があったし、「不条理」であれば、カフカの『失踪者』…