2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧
死せるトルストイ、生けるクッツェーを わたしに共感して読んではだめよ。あなたの心臓とわたしの心臓といっしょに拍動させないで。(p.125) <<感想>> 久々にキツい読書だった。 本作『鉄の時代』の主人公である老女カレンの置かれた状況はキツい。 舞台はア…
私の頭の中の空想家 「ああ!ほんとにあなたはすばらしいお友達ですわ!」としばらくしてから、ひどくまじめな調子で彼女は言いだした。「あたしのために神様がお送りくだすったんだわ!ねえ、もしもあなたがいらっしゃらなかったら、いったいあたしはどうな…
けりをつける アルフョーロフは座ったままもぞもぞと体を動かし、二回ほどため息をつくと、小さく甘い音色で口笛を吹き始めた。やめたかと思うと、また吹く。そうして十分ほどが経ったとき、ふいに頭上でカシャリと音がした。(p.14) <<感想>> ナボコフはやっ…
人に歴史あり 獲物を罠にかけたおばちゃんは、そう簡単には放してくれない。あのなんとか沿いの、どこそこ村の、かんとか夫人よ。だれそれさんの奥さんで、何某のお嬢さん―けれども、解説は非常に遠いところから(少なくとも三世代前から。誕生、結婚、職業…
語りえぬものについても、沈黙したくない 小さな音が窓ガラスにして、なにか当たった気配がしたが、つづいて、ばらばらと軽く、まるで砂粒が上の窓から落ちてきたのかと思うと、やがて落下は広がり、ならされ、一定のリズムを帯びて、流れだし、よく響く音楽…