ウラジーミルの微笑

海外文学・世界文学の感想を長文で書くブログです。池澤夏樹世界文学全集の全巻マラソンもやっています。

2022-01-01から1年間の記事一覧

『ヌマヌマ はまったら抜けだせない現代ロシア小説傑作選』ミハイル・シーシキン他/沼野充義・沼野恭子編訳

キラキラと輝く大地で <<感想>> ヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマヌマ!ヌマ!ヌマヌマ! 狂ったのではなくて、これは歓喜の雄叫びだ。そして多少なりとも狂っている…

2-05『クーデタ』ジョン・アップダイク/池澤夏樹訳

Imagine there's no countries おまえはエクソンによって抹消され、ガルフに巻き込まれ、アメリカによって押しつぶされ、フランスによって公民権を剥奪される。(p.264) “You will be Xed out by Exxon,engulfed by Gulf,crushed by the U.S.,disenfranchised…

2-04『アメリカの鳥』メアリー・マッカーシー/中野恵津子訳

あのひとのママに会うために 「田舎の店って、ただの配給センターなの?」と母はわめいた。「それなら社会主義のほうがましね。ポーランドやハンガリーみたいに国営店のほうが」ピーターは眉をひそめた。鉄のカーテンの向こう側で演奏して以来、母は共産主義…

『ボヴァリー夫人』ギュスターヴ・フローベール/芳川泰久訳

ようやく、愛妻、某ジャクソン夫人 一度、昼のさなかに、野原の真ん中で、日射しがもっともきつく古びた銀メッキの角灯に当たっていたときに、小さな黄色い布の窓掛けの下から、一つの手がにゅっと出て、破いた紙切れを投げ捨て、それが風に乗ってずっと遠く…

2-03②『軽蔑』アルベルト・モラヴィア/大久保昭男訳

振り返れば奴がいる 「だけど、昨日きみはこの住居が好きだって言ったじゃないか」 「あなたを喜ばすために言っただけよ・・・。あなたこそこの家に執着していると思ったから・・・。」(p.302) <<感想>> 既婚男性にはツラい小説である。 それは本作が、妻に…

『夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く』奈倉有里著

ロシア的倒置法 ペテルブルグのエレーナ先生の授業で詩を教わってから、詩は私にとってずっとエレーナ先生がくれた魔法の続きだった。(p.122) <<感想>> 『SLAM DUNK』という漫画がある。 何も今更説明するのもなんだが、ジャンプでバスケな国民的漫画作品で…