ウラジーミルの微笑

池澤夏樹=個人編集 世界文学全集の全巻読破を目指します

フランス文学

『失われた時を求めて』第3篇「ゲルマントのほう」マルセル・プルースト/吉川一義訳

君は、刻の涙を見る われわれは自分の人生を十全に活用することがなく、夏のたそがれや冬の早く訪れる夜のなかにいくばくかの安らぎや楽しみを含むかに見えたそんな時間を、未完のまま放置している。だがそんな時間は、完全に失われたわけではない。あらたな…

原作『失われた時を求めて』愛読者が観た映画「スワンの恋」

インターミッション 公開セミナー「新訳でプルーストを読破する」【過去記事】の公式twitter【参考リンク】にて、映画「スワンの恋」がテレビ放送されると知ったので、せっかくだから鑑賞してみた。 ところで、私は普段ほとんど映画は見ない。このため、俳優…

『パンタグリュエル ガルガンチュアとパンタグリュエル2』フランソワ・ラブレー/宮下志朗訳

共同条理の原理の嘘 ・・・かの哲学者とアウルス・ゲッリウスが述べているごとく、われわれは常用の言語を話さなくてはいけないのだ。(6章、p.84) <<感想>> 以前の記事をお読みいただけたからなら早速お気づきいただいたかと思うが、岩波版を箱付きで全巻買…

『失われた時を求めて』第2篇「花咲く乙女たちのかげに」マルセル・プルースト/吉川一義訳

Overnight Sensation だが、それがどうしたというのか?今は、まだ花盛りの季節なのだ。(第4巻、p.533) <<感想>> 前回の「スワン家のほうへ」の記事【過去記事】では、一人でも多くの方にこの作品に触れてもらいたいという思いから、本作を読むためのコツを…

『ガルガンチュワ物語―ラブレー第一之書』フランソワ・ラブレー/渡辺一夫訳

15cで不良(ポストモダン)と呼ばれたよ いかほど深遠な寓喩や理窟があることになさろうと御勝手でござるし、殿も各々方も、お好きなだけ夢を見られるのもよろしかろう。拙僧より見ますれば、打球戯の有様を、判りにくい言葉で描き出しただけのものと心得…

1-10②『名誉の戦場』ジャン・ルオー/北代美和子訳

人に歴史あり 獲物を罠にかけたおばちゃんは、そう簡単には放してくれない。あのなんとか沿いの、どこそこ村の、かんとか夫人よ。だれそれさんの奥さんで、何某のお嬢さん―けれども、解説は非常に遠いところから(少なくとも三世代前から。誕生、結婚、職業…

『失われた時を求めて』第1篇「スワン家のほうへ」マルセル・プルースト/吉川一義訳

語りえぬものについても、沈黙したくない 小さな音が窓ガラスにして、なにか当たった気配がしたが、つづいて、ばらばらと軽く、まるで砂粒が上の窓から落ちてきたのかと思うと、やがて落下は広がり、ならされ、一定のリズムを帯びて、流れだし、よく響く音楽…

1-10①『アデン、アラビア』ポール・ニザン/小野正嗣訳

孤独な旅行者の夢想 万事上々。祈りとアブサンがゲームに加わって、文明国の市場では植民地株が上昇する。(p.30) <<感想>> なかなかどうして快作である。 本書をごくごく簡単に要約するとこうなる。 20世紀初頭、一人のフランス人の若者がアラビア半島のアデ…

1-04③『悲しみよ こんにちは』フランソワーズ・サガン/朝吹登水子訳

プルーストはお好き? <<感想>> ものうさと甘さとがつきまとって離れないこの見知らぬ感情に、悲しみという重々しい、りっぱな名をつけようか、私は迷う。その感情はあまりにも自分のことだけにかまけ、利己主義な感情であり、私はそれをほとんど恥じている…

1-04②『愛人 ラマン』マルグリット・デュラス/清水徹訳

早すぎたケータイ小説 この川はカンボジアの森のなかのトンレサップ湖から始まり、出会うものすべてを拾い集めてここまで来た。それは訪れてくるものすべてを連れてゆく、藁小屋、森、消えた火災の残り、死んだ鳥、死んだ犬、溺れた虎、水牛、溺れた人間、罠…

1-04①『太平洋の防波堤』マルグリット・デュラス/田中倫郎訳

オイディプス女王 ≪感想≫ ソフト帽は映画からそのまま脱け出たみたいだ―女の件で気がむしゃくしゃするから、財産を半分賭けに、四十馬力の車に乗ってロンシャン競馬場へ行く前に無造作にかぶるような帽子である。(p.32) 清々しいほどつまらなかった。 あまり…

『モンテ・クリスト伯』アレクサンドル・デュマ/山内義雄訳

モンテ・クリスト・ナンバー1 「学ぶことと知ることとはべつだ。世の中には、物識りと学者とのふた色があってな。物識りをつくるものは記憶であり、学者をつくるものは哲学なのだ。」 「ではその哲学が習えましょうか?」 「哲学は習えぬ。哲学とは、学問の…