ウラジミールの微笑

池澤夏樹=個人編集 世界文学全集の全巻読破を目指します

『セバスチャン・ナイトの真実の生涯』ウラジミール・ナボコフ/富士川義之訳

セバスチャン・ナイトは私だ きみと一緒の生活はすばらしかった―そしてぼくがすばらしいと言うとき、ぼくは鳩や百合の花、そして天鵞絨(ヴェルヴェット)、さらにその単語のあの柔らかなVと長く引き伸ばしたlの音に合わせて反り上がったきみの舌の反り具合の…

1-05『巨匠とマルガリータ』ミハイル・ブルガーコフ/水野忠夫訳

ゴーゴリの二の舞 「どうか証明書を見せてください」と女は言った。 「何を言うのです、結局、そんなことは滑稽なものです」とコロヴィエフは譲らなかった。「作家かどうかを決めるのは証明書なんかではけっしてなくて、書くもの次第なのです!・・・」(p.52…

1-04③『悲しみよ こんにちは』フランソワーズ・サガン/朝吹登水子訳

プルーストはお好き? <<感想>> ものうさと甘さとがつきまとって離れないこの見知らぬ感情に、悲しみという重々しい、りっぱな名をつけようか、私は迷う。その感情はあまりにも自分のことだけにかまけ、利己主義な感情であり、私はそれをほとんど恥じている…

1-04②『愛人 ラマン』マルグリット・デュラス/清水徹訳

早すぎたケータイ小説 この川はカンボジアの森のなかのトンレサップ湖から始まり、出会うものすべてを拾い集めてここまで来た。それは訪れてくるものすべてを連れてゆく、藁小屋、森、消えた火災の残り、死んだ鳥、死んだ犬、溺れた虎、水牛、溺れた人間、罠…

1-04①『太平洋の防波堤』マルグリット・デュラス/田中倫郎訳

オイディプス女王 ≪感想≫ ソフト帽は映画からそのまま脱け出たみたいだ―女の件で気がむしゃくしゃするから、財産を半分賭けに、四十馬力の車に乗ってロンシャン競馬場へ行く前に無造作にかぶるような帽子である。(p.32) 清々しいほどつまらなかった。 あまり…

1-03『存在の耐えられない軽さ』ミラン・クンデラ/西永良成訳

重いクンデラ試練の道を あいかわらず四つん這いになっていたトマーシュは、後ずさりし、体を縮めて、ウワーッと唸りだした。そのクロワッサンのために闘うふりをしてみせたのだ。犬は主人に自分の唸り声で応えた。とうとうやった!それこそ彼らが待っていた…

『小説の技法』ミラン・クンデラ/西永良成訳

セカイ-内-存在 小説は固有の仕方、固有の論理によって、人生の様々な諸相を一つひとつ発見してきた。すなわち、セルバンテスの同時代人たちとともに冒険とは何かを問い、サミュエル・リチャードソンとともに「内面に生起するもの」を検討し、秘められた感情…

1-02『楽園への道』マリオ・バルガス=リョサ/田村さと子訳

西欧の接ぎ木 「フローベールの小説『サラムボー』を読んだことがあるかね、牧師」とコケは訊ねた。 (中略)コケは彼に、あの本はとても素晴らしい本だったと言った。フローベールは燃え立つような色彩で、ひとつの野蛮な民族の偉大な活力や生命力、創造力…

作品の分類について

わたしはあなたがたに、精神の三段の変化について語ろう。どのようにして精神が駱駝となるのか、駱駝が獅子となるのか、そして最後に獅子が幼子になるのか、ということ。『ツァラトゥストラはこう言った(上)』(岩波文庫、p.37) 「彼は「ポルノ」の定義を…

『モンテ・クリスト伯』アレクサンドル・デュマ/山内義雄訳

モンテ・クリスト・ナンバー1 「学ぶことと知ることとはべつだ。世の中には、物識りと学者とのふた色があってな。物識りをつくるものは記憶であり、学者をつくるものは哲学なのだ。」 「ではその哲学が習えましょうか?」 「哲学は習えぬ。哲学とは、学問の…

1-01『オン・ザ・ロード』ジャック・ケルアック/青山南訳

カウンター・カルチャーの「王道」 とつぜん、気がつくとタイムズ・スクエアだった。アメリカ大陸をぐるりと八〇〇〇マイル(12785km)まわって、タイムズ・スクエアに戻ってきていた。ちょうどラッシュアワー時で、ぼくの無邪気な路上の目に、ドル札めざして…

このブログのテーマ

念願かなって作り付けの本棚(家付き)を手に入れた。 フローベール(フ3-1)にナボコフ(ナ1ー2)が寄り添ったのに、妻が「いいね!」と言ってくれなかったから今日は本棚記念日じゃない。 腹いせに、これも念願だった池澤夏樹=個人編集 世界文学全集…